紙をめぐる冒険。

collabo #011の編集も佳境に入ったころ、iPad発売のニュースを聞きました。collaboもiPadで読んでもらえたらと夢も膨らみましたが、その前にやることがありました。印刷する用紙のことです。
本の用紙選びはとても大事です。書籍の電子化が始まろうとするときにわざわざ印刷するわけですから、手ざわりや、ページをめくるときの感覚にも気を遣って、フリーペーパーのcollaboのように大事にとっておいてもらえる一冊にしたい。僕たちはそんなふうに考えていました。
しかし当初から予定していた用紙が廃番になってしまいました。印刷会社にも相談しましたがなかなか良いものが見つかりません。光沢のある用紙は発色がいいのですが、安っぽく見えたりします。逆にマットで風合いのある用紙は発色が悪く写真も鈍くなります。予算に糸目をつけなければいくらでも選択肢はあるのですが、できるだけリーズナブルに販売したかったので、そういうわけにもいきません。そんなとき、フリーペーパーのときに使っていた用紙のことを思い出しました。廉価ながら風合いもよく、写真の発色も良い紙。でも6年前のことなので紙の名前が思い出せません。そこでバックアップしていた古いメールボックスから、当時のやりとりを見つけ出し、製紙会社に連絡。いくつかの紙見本をいただき、やっと今回の用紙に辿りつきました。
柔らかく温かい紙質ながら、色ノリがよく、写真もシャープに表現される今回の用紙にはとても満足しています。後に印刷会社の担当者に聞くと、この用紙はスケッチブックなどの画材にも使われる紙とのこと。「こんな紙、知らなかったし、発色も予想外に良かった」と言われたときには、がんばって探した甲斐があったと思ったのです。そしてTwitterで@nacoyashiki さんから寄せられた感想にも

「collabo #011 ゆっくりゆっくり読みました。だってサッと読んじゃうのがもったいなかったから。手に柔らかく、ほっかりと温かい用紙なんですけど、紙面自体も温かいんです。文章は書き手によって少し温度が違うけど、その違いが気持ちいい。」

なんてお褒めの言葉をいただき、うれしい限り。お取扱店では見本誌も置かせていただいています。ぜひ、手にとっていただければと思います。