ラブ&ピースじゃないジョン・レノン / NOWHERE BOY

2010年はジョン・レノンの生誕70周年。生きていたら70歳のおじいさんですね。先月17日にはAppleのiTunes Storeで長年の紆余曲折を経てビートルズの音楽が初配信され、わずか1週間でシングル曲200万ダウンロードという驚くべき数字をたたき出しました。いまだにメジャーであり続けるこのビートルズというバンドの、本当に最初の産声を上げた瞬間が、この映画「NOWHERE BOY」の中ではさらりとしか描かれていません。なぜなら主題はジョン・レノンの実母ジュリアと育ての母ミミ伯母さん、そしてまだ何者でもない若き日のジョン・レノンの3人の物語なのですから。
若きジョンの悲しみ、葛藤、母への思慕。その母ジュリアの懺悔、ミミ伯母さんの毅然とした表情の中にあるジョンへの深い愛。見ていて本当に心が揺さぶられました。そして、この後に続く悲劇を乗り越えて、ジョンはビートルズとして飛び立っていきます。その背景にはジュリアの影響はもちろんですが、ミミ伯母さんの大きな愛があったからこそで、ジョンとの強い絆を感じました。
ドキュメンタリーである映画「Imagine」や、ビートルズ初期の映像などをよく観ましたが、アーロン・ジョンソンの演技は若い頃のジョンのイメージにかなり近いと思いました。特に後半は(ちょっとかっこ良すぎるきらいはあるにせよ)、リバプールの美しい景色とジョンの表情を追ったシーンが多くあり、ジョン・レノンのファンならずとも、そのかっこ良さに惹きつけられること請け合いです。
女性監督のサム・テイラー=ウッドもそうだったのか、アーロンとサム監督はクランクアップ後結婚、監督は出産しました。ちなみに監督とわたしは同年代、アーロンとは23歳差!うらやましいような、すごいような、とにかくびっくりです(笑)。
サム監督は写真家・映像作家としても活躍しているので、映画のシーンは計算され、アングルも決まっています。とても美しいです。そしてビートルズファンなら「このシーンの写真を見たことがある」と思うような、実際の映像を検証しつつの絵作りだったのではと想像できます。映像についてもかなり満足度が高いのではないでしょうか。また、今回初めてアルバム「ジョンの魂」から「Mother」が、オノ・ヨーコの許可を得てテーマソングとして使用されました。エンディングで流れるのですが、歌詞を聴いているとジョンの切ない思いに胸がつまります。
余談ですが、若いポール・マッカートニー役のトーマス・ブローディ・サングスターは映画「Love Actually」の中に出てくる少年サム君で「大きくなったなー」と、映画を見ながらうなずいてしまいました。さすが名子役、ポールの左利きギターの演技もうまかったです。

ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ 公式サイト