幻想的青春道行 / ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1

ハリー・ポッターを読んだのは今から6年くらい前になります。知人が「面白いよ」と1、2巻を貸してくれたのですが、正直なところ「ファンタジーなんて今さら」と思いつつ読みました。すぐにははまらなかったものの3巻の「アズカバンの囚人」以降はその世界観にすっかり魅了され、英語の勉強がてら原書も読んだりしました(もちろん、ストーリーの行く末も気になりましたから)。’09年の秋に出かけたイギリス旅行では「キングズクロス駅9と3/4番線」詣をするほどのファンになっていました。
映画はシリーズ4作目「炎のゴブレット」から劇場で観始め、6作目では運良くドラコ・マルフォイ役のトム・フェルトン舞台挨拶も観ることができました。そして’10年12月、最終章7作目のパート1を観に行ってきました。ストーリーはわかっていますが、頭の中で繰り広げられていたハリーたちの戦いがどのように映像化されるのか、ワクワクしながら映画館へ行きました。
結論から言えば、私が今まで観たハリー・ポッター映画の中では一番の出来でした。パート1、2と二部構成にすることで、これまでの映画では割愛されがちだった細かな(だけど重要な)エピソードもきちんと押さえられ、映画オリジナルの場面にもスタッフの思いを感じました。そしてわたしは映画を観ながら「これはロードムービーだなぁ」と感じていました。前作までのようなホグワーツ魔法魔術学校のシーンはなく、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人が謎を解き、人と出会い、ときには喧嘩をしながら旅を続けます。イギリスの美しい景色の中、3人がこの過酷な戦いの旅を通じて成長し、より深い絆で結ばれていく様子を見守っている、そんな感覚でした。
原作のハリー・ポッターでは、登場人物の成長をていねいに描いています。今回出番が少なめでしたがロンの妹ジニーやハリーの同級生のネビル、そしてハリーのライバルであるドラコでさえ、どんどん成長して変わっていきます。わたしはそんな登場人物の成長の姿こそがこの物語の持つ最大の魅力だと思うのですが、今回の映画ではそこにしっかり焦点が当てられ、ファンとしても嬉しく思いました。ハリーたち主役3人のキャストもキャラクターとともに成長していて、特にロン役のルパート・グリントは嫉妬や焦燥といった感情をとても上手に表現していたと思います。またヴォルデモートの支配下にありながらドラコの揺れる心を演じたトム・フェルトンも強く心に残りました。
今作は原作を読んでない人にも、原作の良さが伝わる良作だと思います。そしてこのパート1を観るとこの夏公開予定のパート2がきっと待ち遠しくなることでしょう。もし「あれはどうしてこうなったの?」と疑問がわいたら、ぜひ原作を読んでみてください。ハリーたちが活躍するこの物語の魅力に引き込まれると思います。

蛇足ですが、劇中で鍵となるおとぎ話「3人の兄弟の物語」の紹介シーンが印象的でした。インドネシアの影絵芝居ワヤン・クリに似せた表現がとても美しく幻想的です。

ハリー・ポッターと死の秘宝 公式サイト
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追記:一部ネタバレの4コママンガを描きました。よろしければどうぞ。