昨日よりも今日が良くなるように。

昨年の春、仕事の行き違いと知人関係の悩みが重なり、わたしは精神的に落ち込んでいました。夜はうまく眠れない、電話が鳴ると心臓の鼓動が激しくなり、メールの着信にも怯えてしまう。平静を装っていても物事が考えられない。「これではいけない、子どもたちに対しても申し訳ない。しっかりしなきゃ」と考えれば考えるほど気持ちばかりが焦り、心が苦しくなっていきました。
そんなとき、ふと本棚から手にしたのが「美術手帳2010年4月号/ディック・ブルーナの謎」でした。ミッフィーはもとより、ブルーナさんのデザインワークが好きで購入していたのですが、そのページをパラパラとめくったとき、ある見出しが目に入りました。
「つらいことがあっても、あなたの人生は続く」。
この言葉はブルーナさんから子どもたちへ向けられたメッセージでしたが、わたしの心にも強く響きました。そして、もうひとつ「昨日よりも今日がほんの少しでも良くなるように」。これはブルーナさんの制作に対する姿勢なのですが、当時のわたしには「昨日という過去にとらわれるのではなく、今日という日を大切に生きよう」という意味に思えました。明日のことはわからないけれど、今できることを自分なりにがんばろうと。そうして、わたしはいつのまにか少しずつ、元気になれたように思います。
今回の巨大地震で被災された方たちは、わたしたちが想像もできないような肉体的、精神的な苦痛を感じ、今も苦しんでおられると思います。また直接の被害はなくても日本中、世界中の人々がショックを受け、言葉にできない辛さや無力感などに苛まれているのではと思います。でもそんな中でも「昨日よりも今日がほんの少しでも良くなるように」と毎日考えられればと思うのです。被災者のみなさん、子どもたち、わたしたちの人生もまだまだ続いていきます。そしてわたしたちの大切な日本という国も続いていく。だからこそ「ほんの少し」ずつでも前を向いて生きていければと思います。

asahi.com「震災、ミッフィーの目には… ブルーナさんがメッセージ」