家は建てられなくても / 海辺の家

ずいぶん前に「男の子の父親なら観ないと」と勧められた「海辺の家」を観た。余命宣告された父親がグレた息子といっしょに家を建て、親子関係を修復する〜という大枠は知っていたけれど、もうどうしようもなく泣けた。歳のせいか涙腺もゆるくなってるのだろうけど、次から次へと涙が溢れてきた。この映画ほどプロジェクターでよかったと思ったことはない。(真っ暗でスクリーンしか見えないからね)。
時代から取り残されたいささか身勝手な父親と、家庭不和から自分を見失い荒れた息子。そして別れた妻とその新しい旦那と幼い子どもたち。さらにそのまわりの人々まで巻き込み、自己や絆を再生していく様子は、文章にしてしまうと安っぽいが、無駄のない脚本で一気にラストまで魅せてくれる。
親が小さな子どもを殺したり、子どもが親を殺したり、家族にまつわる悲しいニュースが多い今日。この映画は多くの人に響くはずだ。男親、女親、関係なし。思春期の子どもには直接的すぎるかもしれないが、子育てが一段落した親子が観ても楽しめると思う。
そして観終わった後は、自分の家族について思い返さずにはいられない。幸い、うちの兄弟はまだのほほんとしていて、長男は少し幼すぎるぐらいなんだけど、これは逆にチャンスかもしれない。海辺に土地もないし、家を建てる技術もないごくごく普通の父親としては、毎日子どもとしっかり向きあって、話して、抱きしめるぐらいしかできない。普通にできることを積み重ねていきたいと改めて思った。