親の立ち位置 / カラフル

意図したわけではないのだけれど、前回の「海辺の家」と同じく、10代の男の子が立ち直っていくストーリー。もちろん、それは大枠の話で、その世界の成り立ちは大きく異なっているけれど。
直木賞作家・森絵都さんのベストセラーをアニメーション化した本作は、日常の風景を淡々と描きながら、中学生時代の苦々しさ、息苦しさをこれでもかと見せつける。海辺にどかんと家建てよーぜ的な爽快感はこれっぽっちもない。クラスの中の緊張感と疎外感とか、ずれた感じのする教師とか、受験への焦りとか、初恋の女の子への失望感とか、家族への甘えと傲慢とか。「あーこの窮屈な感じってあったなぁ」と、30年前の10代前半をリアルに思い出させてくれた。
同時に描かれるのは、家族や友だちのあたたかさとぬくもりだ。どんなに反抗し悪びれても支えようとする両親や、無関心を装いながらも見守り続ける兄の姿には胸が熱くなる。しかし、当の主人公は素直に受け入れられない。愛情を拒絶し、嫌悪し、背を向ける。彼なりの理由はあるにせよ、思春期とはそういう時期なのだろう。
そんな主人公の閉塞感を打ち破り、生への原動力となるのは、家庭ではなく友だちの存在だ。それもたったひとりの友だちが、主人公を暗い暗い海の底から引きずり出し、生きる意味を見つける。そのようすは親の限界を感じさせ、ちょうど思春期前の息子を持つ僕には少々切ない。長男は主人公が母親の作る料理に手をつけず、辛く当たる様子に憤っていたが、さて、その気持ちはいつまで続くのだろうね。
いまだ甘えん坊な兄弟もいずれは離れていくのだと思うと、複雑な気持ちになるが、親は子どもに寄り添うことはできても、立ち位置を同じくはできない。そんな当たり前のことを改めて気づかせてくれた。子どもたちはもちろん、思春期の子どもに苦戦中のお父さんやお母さんも、ぜひどうぞ。「そっか。自分もこんなふうだったなぁ」と気づけば、少し気が楽になるかもしれません。