コーヒーの話 第1回 生豆のこと。焙煎のこと。

そもそも「おいしいコーヒー」ってなんでしょう? 人それぞれに答えが違うでしょうから、とても難しいテーマです。でも、コーヒー豆について説明することで、あなたにとっての「おいしいコーヒー」が見つかるかもしれませんから、少しお付き合いください。

コーヒーは「コーヒーノキ」という植物にできる実の中に入っている種子(コーヒー生豆)を加熱(焙煎)して、それを粉にして湯や水で成分を溶解、抽出してできる飲み物です。ほかの食品と同じように産地や加工具合で味が違うのは当然のことです。
おいしいコーヒーを作るために一番重要なのは、素材である生豆が良いことで、素材が悪ければ味付けでごまかすしかありません。たとえばブラジルと言っても、大量にどーんと栽培している農園もあれば、手間をかけてしっかり栽培している農園もあります。そして広い国ですから栽培している場所によって、土、標高、気候が違えば、当然、味も変わってきます。「ブラジルが好きだ」と言っても通用しないときもあるのです。
そんなコーヒーをさらにややこしくしているのは「焙煎」です。たとえ同じ生豆でも、加熱時間と熱量によって全く別の味になるのです。生のコーヒー豆は緑がかった色をしていますが、加熱していくと白っぽくなり、薄い茶色になり、濃い茶色になり、やがて黒に近くなり表面に油が出てきます。
浅煎りは酸味が強く、香り成分も多く含まれます。深煎りは酸味が弱くなるかわりに苦味が強く、香り成分とカフェインが減少します。浅煎りと深煎りどちらが正しいとか、そういう問題ではなくて飲む人の好みでおいしいと感じたり、体に合わなかったりするのです。これだけは人や本がどうこう言っても自分で判断するしかないので、いろいろと飲んで比べてみるのがいいでしょう。「私は酸味が好き」、「僕は深煎りがしっくりするな」という具合に、あなたにとっての「おいしいコーヒー」が見つけやすくなると思います。少し慣れてくると、お店の前に行くだけで(飲まなくても)、自分にとってのコーヒーかどうかが判るようになります。
僕は深煎りが大好きで、体にも、気持ちにもしっくりくるし、深くなければ味わえない甘みに強く惹かれています。そして刺激が少ないので、自分の子どもにも1歳を過ぎたころからごく少量「飲みたい」と言うときだけコーヒーをブラックで与えています。「にがい! けど、おいしい」といって飲んでくれます。どうかあなたにもコーヒーとの幸せな出会いがありますように。ではまた。

文 / 鈴木 義弘 milou(ミル)店主

自家焙煎珈琲と手作りおやつの店 milou(ミル)
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