今日が人生最後の日だとしたら。

2011年も残りわずかになりましたが、今年観た映画(DVD)で印象に残っている2本があります。「100歳の少年と12通の手紙」と「恋はデジャブ(原題 Groundhog Day)」です。
「100歳の少年と12通の手紙」は、白血病で余命僅かの男の子オスカーと口の悪いピザ屋の女性ローズの物語。タイトルや設定からお涙頂戴の物語を想像しますが、よい意味で期待を裏切る映画でした。オスカーはローズに勧められ、毎日神様に手紙を書きます。そして1日を10年と考えるように教示され、12日間、病室にいながらさまざまな体験を重ねていきます。1日目にはまだ思春期だったオスカーも2日目には恋に落ち、やがて結婚をし、浮気や別れも経験。ところどころに挿入される美しいシーン、風船に手紙をつなぎ寒空へ飛ばすところや、楽しい雪のクリスマスも印象的で、子どもたちにも観せてあげたい作品です。
もうひとつはコメディ映画。邦題の「恋はデジャブ」はさておき、原題の「Groundhog Day」は、アメリカやカナダの各地で2月2日に行われる伝統的な祭事で、冬眠から覚めたGroundhog(ウッドチャック)の行動を見て、春の到来の時期を占うものだそう。その様子を中継するためにペンシルベニア州の田舎町へ来たTVリポーター・フィル(演じるのはビル・マーレイ!)は自己中心的で嫌な男。無事に中継を終え、戻ろうとするものの大雪で足止めされてしまいます。ところが翌朝、起きてみるとまた同じ2月2日。なぜか時間のループにはまったフィル。数えきれないほどの2月2日を過ごした彼はどうなるのでしょう。
ふたつの映画はまったく異なるストーリーながら、一日一日の大切さを教えてくれるように思います。かたや終わりが見えて、かたや終りが見えない。けれども自分自身に問いかける大切な、かけがえのない今日という一日。そしてこの10月に亡くなったスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチも、同じような意味に感じたのです。

私は17歳のときに「毎日をそれが人生最後の一日だと思って生きれば、その通りになる」という言葉にどこかで出合ったのです。それは印象に残る言葉で、そ の日を境に33年間、私は毎朝、鏡に映る自分に問いかけるようにしているのです。「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか」と。「違う」という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということです。(注

今年は東日本大震災や福島第一原発の事故など、たくさんの人が苦しみながら、悩みながら、日々を過ごしていたように思います。これまで感じたことのない絶望と先の見えない恐怖。そんな中にあってもふたつの映画のように、小さな希望や喜びや充実感を分かち合いながら生きていくことができたらと強く思うのです。

注: 日本経済新聞「『ハングリーであれ。愚か者であれ』 ジョブズ氏スピーチ全訳 米スタンフォード大卒業式(2005年6月)にて 」より引用。