はるよこい / ふゆねこさん

_MG_5541

僕はノラ猫を見かけただけで、今日はいい日だなぁと思うほどの猫好きだ。愛想のいい猫がカラダを撫でさせてくれたり、ゴロンとなっておなかを見せてくれたりしたら鼻歌歌っちゃうほど。
でもそんな風にのんびり気楽に生きているノラ猫はきっと少数派で、多くのノラ猫たちは孤独に生きている。場合によっては、人間に虐げられたり、ほかの動物と縄張り争いをしたり。平均寿命も飼い猫に比べれば短いだろう。
「ふゆねこさん」が描かれる季節はその名の通り、真っ白な雪に覆われた冬。しかも夏に生まれたばかりの猫は「空からひらひら舞い落ちてくる白いもの」も、「ふゆがどういうものか」も知らない。
そして3人の兄弟は、猫を「ふゆねこさん」と呼び近づこうとするのだけど、人慣れしていない猫はなかなか距離を縮めない。「こえをかけられるのはすきだけど」、近くまで来るとつい逃げ出してしまうという描写はリアルで、もどかしい。
しかし、日ごとに距離は縮まり、あまりの寒さに耐えきれなくなったある日、猫は子どもに抱かれ、家の中へ。そして喉をゴロゴロと鳴らし、子どもたちは猫を「うちねこさん」と呼ぶ。
黒一色で淡々と描かれた美しくも厳しい白銀の世界。そして、猫と子どもたちのぎこちなくも穏やかな交流。その対比は読む者の心までほんわかと温めてくれる。絵本の中の猫や子どもたちといっしょに、のんびり春を待ちたくなる一冊だ。