大須のタカラモノ、miauenインタビュー。

petit collabo *005で取材させていただいた大須の雑貨店、miauen(ミャウエン)。オーナーのたまみさんにお話を聞きました。petit collabo *005と合わせて読んでいただければと思います。*こちらからPDFをダウンロードできます。

キムラ:お店の名前が変わったり、姉妹店がたくさんあった時期もありましたけど、現在までの変遷をうかがいたいと思います。まず、どうやってお店を始めたのですか。

たまみさん:中学生のころから雑貨が好きでした。高校卒業のころには就職活動もしていましたが、体が弱いこともあって普通に働くのは無理かなと。そのころ東京の雑貨店「木曜館」がオープンしたときの話を知り、名古屋ならもっと安く開店できるのではと思ったんです。
バイトで貯金をして家族の支援も受けて、18歳のときに最初のお店「papa & mama」をオープンしました。そのころは蚤の市や業者の市で買い付けをしていたので、品揃えも少なかったですね。
別の場所に「カナリアクラブ」を作り、「papa & mama」から「picnic」へ店名を変えました。「picnic」の隣のお店が空いたので「à pois poche」というお店を作りました。また自宅マンションの1階に「app voyage」という旅をモチーフにした雑貨店も作りました。
でもほかにも芝居や音楽の仕事をしていたので、だんだん手がいっぱいになって1店舗に絞ることにしたんです。そこで「picnic」を「miāuēn(ミャウエン)」に店名変更。そして今に至ります。

キムラ:どうしてそんなに店名を変えたんですか。みんなかわいい名前だけどすごく不思議です。

たまみさん:実は結婚と離婚を3回したので、その度に店名を変えてるんです(笑)。もともと気に入った名前でもなかったし。「カナリアクラブ」も本当は「カナリア」だけが良かったけど、画数が悪いとおばあちゃんに言われて「クラブ」をつけてるんです。「miāuēn(ミャウエン)」はドイツ語で猫の鳴き声なんですけど、これは気に入ってるのでずっと使いたいなと思っています。

キムラ:そうだったのですね。意外な答えで謎が解けました(笑)。フランス語の名前が多いですが、フランスがお好きなんですか。

たまみさん:フランスにはしばらく住んでいました。お店を始めたばかりのころイギリスへ買い付けへ行って、その後、フランス、ドイツ、ベルギー、オランダなどへ行くようになりました。フランスは陸続きなので、ベルギーやドイツなどにも行きやすいし、なにより住んでいて楽しかったですね。フランスの音楽も好きで、音楽活動をしている友だちとよくいっしょに遊んでました。
パリの街を東京に例えると、シャンゼリゼ・凱旋門のあたりは銀座、オペラ座界隈は渋谷、モンマルトルは下北沢でしたね。モンマルトルは住んでいたこともあってすごく好きな街、下北沢も同じように好きな街です。モンマルトルのピガール地区、ムーラン・ルージュのまわりは「エロ街」で、マーケットなどへ買い物に行くときどうしても通らなくてはいけなくて、急いで通っていましたね。よく「いくら?」みたいな声もかけられたけど。
フランスの田舎・ノルマンディには音楽仲間が住んでいて、遊びに行くとすごく楽しいの。パリなどとは違って蚤の市とかマーケットでも、普通のおばあちゃんが孫といっしょに出していたりするんです。家で使わなくなったものを売ってるんですよ。それがまたすごく安くて、いいの?って思いながら買い付けしてました。

キムラ:ミャウエンの商品は海外のものでもすごく良心的な価格ですよね。それにほかにあまりないラインナップというか。

たまみさん:どこの国のものも関係なく集めてますね。買い付けのポイントはひとつだけ。「好き」なもの。だからアンティークとして価値があるかどうかではなく、変な顔のぬいぐるみでも「好き」と思えたら買ってしまいます。このクマのぬいぐるみだって、ちょっとシルエットが歪んでいて、バランスが悪いけど「なんでこんな形なの?」と思いながらも、愛しくなってしまうんです。

キムラ:どのお店も大須でしたが、名古屋や大須についてなにか思い入れはありますか。

たまみさん:名古屋は暮らしていくのにすごくいい街だと思う。東京に住んでいたこともあったけれど、仕事が忙しくて、せかせかしちゃって落ち着かなかった。東京も大阪も刺激的ではじけていて、若いころは本当に大好きでよく行ったけど、いまは名古屋・大須の良いリズムで暮らしてます。住むなら名古屋かフランスですね(笑)。
大須は街そのものがすごく動いてる感じで、入れ替わりが結構激しい。うちのお店は20年以上になりますが、同じくらいなのは古着のジパングさん、名物屋さん、すけあくろうさんとかかな。長くやれたからわかることもあるし、それがものを作ること、ディスプレイすること、お店をやっていく上で役に立ってることもたくさんありますね。

キムラ:タマミさんご自身の作品もお店にたくさんありますよね。作家さんの小物も充実していますし。

たまみさん:作家さんはいいなと思ったものを買取して置いています。店番を常にわたしがやるわけではないので(主にみめこおばあちゃん)、委託だと管理が大変だし、変な話、お客さんが誤って壊しちゃっても買取だとうちが責任もてるから。
わたし自身が作っているのはアクセサリー、バッグ、布小物などです。毎日毎日、死ぬ気でがんばって作ってますよ。ほんと地獄のようです(笑)。たぶん、うち以外の雑貨店さんは「かわいい」「楽しい」お店経営だと思うんだけど、うちは地獄ですね。朝起きてご飯食べたらずっと作品作りと仕事。仕入れも重いしかさばるし、肉体労働で大変です。
お店のディスプレイもちょくちょく変えているんですが、完璧にできたことがない。このコーナーを作ったら、別のコーナーが気になって変えていく。そんな感じで永遠に終わらないんです。できるまでやめられない。できちゃったら終わりかもしれない。でも好きだから、楽しい。おばあちゃんの年になるまでやりたいですね。このお店をやれて、本当にしあわせです。

たまみさんのインタビューはこれでおしまい。次回みめこおばあちゃんとマスコットの話に続きます。


オーナーのたまみさんが作るキュートなアクセサリーやマスコット。バッグなども制作されています。


裁縫道具やボタンなどのパーツ、紙箱に缶などが所狭しとディスプレイされています。


ヨーロッパや日本の絵本もあります。他にエフェメラ(パッケージ、カード類、チケット、コースターなどの紙製品)もたくさんあります。


ぬいぐるみとカップ、ポットとグラス。不思議と統一感が。


小さな子どもたちがバスケットに好きなものを入れて買い物できるコーナー。棚は低く、壊れにくいものを置いています。

petit collabo*005できました。 *miauenからのプレゼントもありますよ。
petit collabo *005のPDFができました。