共有すること / センス・オブ・ワンダー

雨が激しく降った日の夕方。わたしが用事から帰ってきたのは、薄暗くなりかけた6時過ぎでした。子どもたちがいないのでどうしたのかとパートナーにたずねると、夕食の献立に足りない物があったから、近所のお店にお遣いに行ってもらったとのこと。窓の外を見るとまた雨が激しく降り出してきました。傘立てには子どもたちの傘が残っています。
私は慌てて子どたちの傘を持ってお店へ向かいました。道すがら名前を呼んでも返事はなく、お店にも子どもたちの姿はありません。やれやれ行き違っちゃったのね…と思いながら自宅へ戻ると、お風呂からキャッキャという声が聞こえてきます。びしょ濡れになった子どもたちは、パートナーに促されてお風呂にはいっていました。一緒にお風呂にはいると「ママ、ゴメンね。でもね! 帰りに森の近くで、クマゼミが雨の中でひっくり返ってたから、起こしてあげたんだよ!」と嬉しそうに話す長男。子どもたちは急に降り出した雨もへっちゃらで、夕方の暗がりでもがくセミを見つけて助けようとしていたことになんだか嬉しくなったのでした。「そっかークマゼミ大丈夫だといいね」などと話ながら。
レイチェル・カーソンの「センス・オブ・ワンダー」には、甥(実際は姪の息子)のロジャーと一緒にしぶきを浴びながら夜の海へ行くエピソードがあります。その波の荒々しさも何もかも自然の荘厳さとして、小さなロジャー坊やと一緒に感じることに、喜びと意義を見いだす作者がいました。レイチェルは言います。知識はいらない、感動を共有することが大切なのだと。
子育てをしながら、環境や自然について考えることは何度もあります。わたしにとっての答えがこの本にありました。レイチェル自身に子どもはいなかったそうですが、子どもにも大人にも大切な素晴らしい自然との関わり方について、くっきりと伝えてくれます。

センス・オブ・ワンダー(The Sense of Wonder)
Author / レイチェル・カーソン
Publisher / 新潮社
1977初版